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失語症を知っていますか?

失語症」というと「聞いたことはあるけどよく分らない」障害の代表ではないでしょうか。そんな失語症のことを少しでも知っていただけるように簡単に解説します。

 

 

 

1.失語症ってどうして起きるの? 

失語症とは、脳梗塞(のうこうそく)・脳内出血などの脳血管障害や交通事故・転倒などによる脳外傷によって、大脳の言語をつかさどる部分が損傷されたために起こる言葉の障害を言います。まぎらわしいものに、声に異常があって発声できない「失声症」や、唇や舌の動きが悪くなって発音できない「運動障害性構音障害」というものがありますが、これらは原因が異なる上に、言語内容には問題なく筆談ができるという点で失語症とは異なります。

 

 

 

2.失語症になるとどうなる?

「失語症」というと「話せない」というイメージが強いかもしれませんが、それは症状の一部に過ぎず、中にはよくしゃべるが何を言っているか分りにくいタイプもあります。症状は損傷を受けた脳の場所や大きさによって異なりますが、多かれ少なかれ「聴く」「話す」「読む」「書く」といった言葉の働き全てに何らかの影響が出ます。例えば、相手が何を言っているのか分からない、自分が言おうとしても言葉が出てこない、言葉を言い間違う、上手く発音できない、相手の言うことをまねして言えない、文字や文が読めない、何が書いてあるのか意味が分からない、字を書こうと思っても字が思い出せない、数字も言い間違ったり書き間違ったりするなど、さまざまな困難さが生じます。

 

 

 

3.失語症は記憶障害ではない

例えば、失語症の方に「今日は何月何日ですか」と聞いて日付を間違えたからと言って、日付が分らないと早合点しないでください。カレンダーを見て正しい日付を指させるなら、その方は日付を覚えているが数字を言い間違えたのだということになります。

 

また、失語症の人に「塩を取って」と頼んだのに「塩?」と分らなかったとしても、塩自体がどんなものかが分からなくなったのではなく、「しお(sio)」という音と意味が結びつかなくなっているのです。頭の中には「言葉の辞書」も「物の意味の辞書」も残っているのですが、それらがうまく結びつかず、いわば断線状態や混線状態になっているわけです。

 

物の意味は分かるし言葉も知っているのにうまく繋がらないという事態は「話す」時にも生じます。例えば失語症の方に「昨日どこに行ったの?」と聞いて「えっと……」と答えられない場合ですが、それは覚えていないのではなく、どこに行ったかは覚えているが地名が出てこないということが多いのです。そんな時は地図で探してもらうと指さして答えてくれるでしょう。

 

次回は、このような失語症の方と上手にコミュニケーションを取るコツをお話ししたいと思います。

 

(2016.05発行│広報誌「甲友会ナウ」No.33より)

 

 

 

 

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