2025年度西宮協立訪問看護・ケアプランセンターでBCP訓練を実施しました

西宮協立訪問看護センター、管理者の稲葉典子です。私は、2021年度より厚生労働省医政局事業「在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業専門家委員会」の訪問看護BCP分科会に参画しています(詳細は公式サイトをご覧ください。外部サイトが開きます)。
2021年の介護報酬改定において、2024年4月から介護施設・事業所におけるBCP(事業継続計画)の策定が義務付けられました。この記事では、当センターでのBCPの策定・訓練・研修・見直しについて、実際の訓練とともにご紹介いたします。
大雪を想定して訓練を実施

BCPには、災害対策本部の設置や、災害対策本部長をはじめとする役割が定められています。また、「上席者の指示があるまで、あなたがリーダーです」という考え方も示されており、スタッフ一人ひとりが主体的に考え行動することが求められます。
今回は、「全員参加」と「難しく考えない」をテーマに、〈2025年12月25日に大雪に慣れていない阪神間で大雪が発生したという想定〉で、以下の訓練を実施しました。
災害対策本部を想定した運営シミュレーション
1.利用者さまへの事前連絡と訪問優先度の判断
2025年12月25日に訪問予定の利用者さまを確認し、BCPで定める「災害時安否確認の優先順位」を踏まえながら、「必ず訪問が必要な方」「日程変更をお願いする方」「訪問を中止する方」を判断する訓練を行いました。
2.災害対策本部設置訓練
災害対策本部を立ち上げ、災害対策本部長である所長がスタッフの出勤方法や勤怠変更、移動手段、翌日の連絡時間などを話し合いました。

3.携帯当番・出動体制の検討
当センターでは、平時より携帯当番による24時間緊急対応を2名体制で実施しています。今回の訓練では、大雪発生時を想定し、12月25日から26日にかけての携帯当番の変更や、スタッドレスタイヤ装着車の配置、緊急訪問が必要となる利用者さまへの対応方法およびスタッフの役割分担について検討しました。
4.当日訪問依頼のロールプレイング
大雪当日に利用者さまから「翌日以降の排便処置が待てないのでどうしても来てほしい」という依頼があった時の返答について、2人1組で利用者さま役・スタッフ役に分かれてロールプレイを行いました。付箋(ふせん)にやりとりを記載し、ライティングシートに貼って共有しました。

5.断水に備えた災害用トイレの設営訓練
断水に備え、ポータブルトイレを使用した災害用トイレの設営を行いました。凝固剤の使い方やビニール袋の取り付け方について、スタッフ全員で再確認しました。

6.スタッフが負傷したときの対応
医療処置が必要な訪問に直行したスタッフから「雪で転倒し足を負傷。歩行困難な状態。」という連絡が入ったことを想定して、受傷したスタッフの救護について考えました。
7.さらなる降雪予報が出たときの判断
大雪当日の午後、さらなる降雪によりスタッフの帰宅困難が発生する可能性を想定し、スタッフの早期帰宅の判断や翌日の事業運営について、災害対策本部で検討しました。
備蓄品点検ツアー
各自でチェックリストを見ながら備蓄品の内容を点検しました。また、蓄電器に防災ラジオやタブレットをつなげ充電し、蓄電器の使用方法についても再確認しました。

訓練から得た気づき
携帯当番について
雪道に慣れていないスタッフが夜間を含めて24時間対応をするプレッシャーと安全管理について改めて再認識できました。
当センターには6台の訪問車を配備しており、冬季は1台のみスタッドレスに履き替えるようにしています。しかし、そもそも1台で問題ないのか検討しています。数年に一度の大雪リスクにどこまで備えるかという課題はありますが、多くのスタッフが雪道での運転や移動に不安を感じているため、有効な安全策を考えていく必要があります。
訪問調整について
タイミングによってはスタッフの帰宅困難への対応も必要となり、停電や断水中の事業所での寝泊りの準備も考えることになります。当センターは台風往来や水害関連の警報への対応を何度か経験してきました。また、安否確認優先の表出力や利用者さまの優先度プロットも定着していたため、これらのシミュレーションについてはスムーズな議論ができました。
スタッフの安全確保か、訪問対応か
「どうしても来てほしい」という利用者さまからの電話へどのように対応するか。ロールプレイを通して、管理者である私自身も気づきがありました。それは、「看護スタッフにどうつなぐか」という考え方を職種間で共有する必要があるということです。緊急電話への対応が平時の業務である看護スタッフにとって、その対応が利用者さまの安心につながっていることを、リハビリテーションスタッフや事務スタッフからの意見を通じて改めて認識しました。職種により電話対応を通して与えられる効果は違って当然です。看護スタッフの電話対応は、利用者さまの安心につなげる「テレナーシング(遠隔看護)」の力が求められています。
スタッフからは、「事業所としてある程度統一した対応方針を決めておいた方がよい」との意見もありました。有事にはスタッフ数が減少し、リハビリテーションスタッフや事務スタッフが電話対応を担う場面も想定されます。利用者さまが納得し安心できるよう、適切なタイミングで看護スタッフにどうつないだらよいか、管理者としてその意識を醸成する必要性を感じました。今回のロールプレイの結果は、トークスクリプトとして所内で共有し、今後の対応に活かして参ります。
備えについて
災害用トイレの作り方や備蓄品の点検は、事業所内の誰もができる状態になっておく必要があるでしょう。それは同時に、事業所だけでなくスタッフや利用者さま自身の備えにつなげられます。スタッフ全員で取り組むからこその気づきを得られることは訓練の効果の一つです。
「もしも」を想定して共通認識をもつ
BCPの訓練は、「もしも」をどのように想定し、主体的に考え、正解のない状況においても共通認識を形成していくかを考えるきっかけになります。今回の訓練の原案は、「雪に慣れていない訪問看護ステーションが大雪を想定した訓練をするためのアイデアを出してほしい」と生成AIに問いかけ、得られた回答を当センター用に大幅にアレンジしたものです。さいごに、生成AIとの対話の中で次の言葉が目に止まりました。
「正解」を出すことよりも、「うちのステーションでは、こういう基準でこう動くことにしよう」というチーム内の合意形成を作ることをゴールにしてください。「正解」よりも「合意」です。
当センターでは、1~2ヵ月おきに職員の安否確認連絡網テストや、法人在宅事業部共通のコンテンツでBCPを学ぶ研修などを実施しています。今後も「もしも」を想定する力を高めながら、BCM(事業継続マネジメント)の取り組みを進めて参ります。
その他のBCPに関する記事












