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訪問看護が取り組むBCP策定のプロセス〜その2〜

西宮協立訪問看護センター、管理者の稲葉典子です。2021年の介護報酬改定において、2024年4月から介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)の策定が義務化されました。自然災害や感染症が発生した場合でも、訪問看護の事業を安定的かつ継続的に提供するための計画を立てることが求められています。

 

私は、2021年度・厚生労働科学特別研究事業である、在宅医療のBCP策定に関わる研究に訪問看護BCP分科会メンバーとして参画しました(詳細は公式サイトをご覧ください。外部サイトが開きます)。この経験を踏まえて実施した、当事業所のBCP策定のプロセスについて、2回に分けてお話しします。

 

 

 

BCP策定の流れとポイント

当事業所が策定したBCPは「オールハザード・アプローチ」と言われています。オールハザード・アプローチとは、自然災害や感染症まん延、サイバー攻撃などといった、あらゆる危機を対象とした危機管理学です。有事においても〈経営資源を整え、事業をどう継続するかという大目的からみれば、危機の種類に関わりなく、整備すべき項目に共通性がある〉という考え方で作られています。

 

「オールハザードアプローチ」で作成された「2021年度厚生労働科学特別研究事業 在宅医療の事業継続計画(BCP)策定に係る研究~訪問看護編~(外部サイトが開きます)」におけるポイントをご紹介します。作成時にご活用ください。

 

  • Step1 BCP策定の目的:基本方針の明確化と組織づくり
  • Step2 リスクアセスメントとリスク対応計画書
  • Step3 初期対応・緊急対応・指揮者マニュアル(いわゆる災害対応マニュアル)
  • Step4 平時の業務を洗い出し、有事の業務への影響を分析
  • Step5 業務継続のための戦略(特に「人」と「移動手段」)
  • Step6 業務継続計画の開発と構築

 

Step6まで完了すると、BCPは策定できたということになります。

 

 

 

BCPを策定した、その後は……

Step6にたどり着くとBCPは策定できた、ということになるのですが、「では、この先はどうしたらいいんだろう……」という不安にかられる方もいらっしゃるかもしれません。実は、BCPは自身の訪問看護ステーションで整備すればそれで完結、ではありません。

 

お話は、前回(『訪問看護が取り組むBCP策定のプロセス〜その1〜』)お伝えした「BCPを育てる」ことにつながります。山岸暁美氏(一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 機構長・理事長/慶應義塾大学医学部公衆衛生学教室)は、Step6の先に、さらにStep7とStep8を提示されています。

 

  • Step7 業務継続マネジメント→演習・訓練とBCPの評価、維持
  • Step8 連携型(訪問看護ステーション同士)・地域包括(所属地域多職種)BCPの策定

 

BCP策定後、有事において事業所が機能するためには、訪問看護ステーション同士の連携がキーとなります。訪問看護ステーション同士が、職員や利用者を守る手段としての情報共有や協定を検討する、という段階が求められるのです。所属地域において多職種連携を推進すべく、協議の場が必要でしょう。

 

BCPの目的は、「利用者・職員の命と生活を守る」ことでした。容易とは言いがたいBCP策定ですが、いつか必ずやってくる有事に備えるため、この目的を忘れないように取り組みましょう。私自身にも、そう言い聞かせています。

 

 

 

BCP策定の副産物?

BCP策定に関わる業務を進めていくと、平時の事業運営の整備そのものにつながっていくことに気がつきました。BCPの考え方が介護施設・事業所運営に関わる皆さんの中で消化され育っていくと、どうなるでしょうか。

 

有事においてもスタッフ一人ひとりが、BCPを踏まえて自ら思考し、指示を待つことなく、逆に指示を出す方へ働きかけられるくらいのKnowledgeとPassionをまとっていけるかもしれません。

 

平時から有事を想定した備えができていることが、通常業務の推進にも効果的に働くと考えています。それはBCP策定を通して得られる素敵な副産物でしょう。

 

 

※前の記事はその1をご覧ください

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