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知っておきたい「地域包括ケアシステム」

西宮市瓦木在宅療養相談支援センター、所長の松平康子です。

 

皆さんは「地域包括ケアシステム」という言葉を耳にされたことがありますか?これは、厚生労働省が、地域(市町)に必要だとした、支え合いのシステムです。このシステムの「支え手である〈あなた〉=市民や支援者の皆さん」に、地域包括ケアシステムについて知っていただきたく、私の経験を踏まえながら3回シリーズでご紹介したいと思います。

 

第1回目は、「地域包括ケアシステムはなぜ必要なのか?」についてです。

 

 

 

地域包括ケアシステムはなぜ必要?

 

ご存知の通り、日本において少子高齢化は世界に先駆ける速さで進んでいます。高齢者の方の多くは、何らかの医療や介護が必要とされますが、このままでは、高齢者の方を多方面で支える「支え手」が足りません。そこで厚生労働省は、医療や介護が必要な状態になっても「住み慣れた地域で暮らし続けられる」方法、「自分の望む生活が人生の最後までできる」方法を考えました。

 

「住み慣れた地域」とは、単に物理的な住まいや住居地だけではなく、馴染みの関係の中で生活することも指しています。馴染みの関係とは、家族や友人だけではありません。近隣の住民やお店の人、ペットの散歩仲間、駅や図書館の人、主治医や薬剤師といった医療・介護に関わる人たちをも含みます。皆さんの生活には関係の長さや深さに関わらず、多様な馴染みの関係があるのではないでしょうか。

 

では「自分の望む生活」とは何でしょうか。私は、〈わがまま〉に暮らすことだとお伝えしています。〈わがまま〉は〈我がのまま〉という意味です。できるだけ、自分のペースで、自分のやり方で、自分が大切にしていることを大切にできる生活。例えば、住み慣れない、知らない人ばかりの地域や集団生活の中で〈わがまま〉に暮らすと、当事者も関わる人たちも互いにストレスを感じてしまうかもしれません。「自分の望む生活が人生の最後までできる」ためにも、「住み慣れた地域」で暮らし続けられるようにすることが大切なのです。

 

 

 

誰もが当事者であり支え手です

ここまで読んでいただいた〈あなた〉は当事者として読まれていますか。それとも、支え手として読まれているでしょうか。実は、地域の中で暮らす私たちは、誰もが当事者であり、支え手となります。これが、地域包括ケアシステムの大きな特徴です。

 

次に、馴染みの関係のなかで心身の活動を維持し、その原動力となる自身の役割や自己肯定感・自尊心を保つことで「悪循環」に陥ることを予防する、地域包括ケアシステムの例をご紹介しましょう。

 

 

 

悪循環を良循環に

お一人暮らしのAさん(75歳)は、年齢を感じて、長年務めていた自治会長を自ら辞めました。ここから、お気持ちや行動に変化が現れます。「もう何もできることがなくなった」という気分から外出の頻度が減っていきました。すると、食欲も湧かなくなったり、家の中でつまずきやすくなったり、体力の衰えや体調不良まで感じるようになりました。ご近所さんと顔を合わすのはゴミ出しの時だけになっていましたが、次第にそれも避けるようになりました。

 

今、Aさんは気持ちや体調だけでなく、人間関係や暮らし方にまで「悪循環」が生じています。このAさんの悪循環を「良循環」に変えていけるのが、地域包括ケアシステムです。

 

例えば、Aさんは自治会長を退任しても、その知識や経験を活かして自治会をサポートすることができますし、自治会活動を通して育んだ人間関係を活かして地域住民のサポートをすることも可能ではないでしょうか。また、周囲の方からAさんに声をかけてあげたり、一緒に活動をすることも、Aさんへのサポートのひとつですね。いわゆる「自助」や「互助」の考え方が重要になります。こうした支え合いを通して健康寿命をいかに伸ばすかも、地域包括ケアシステムの目指すところです。

 

多様な「良循環」を作り出し、それらが地域に広がれば、これからの少子高齢化社会においても、安心して暮らし続けることができるでしょう。

 

 

 

 

『みやっこケアノート』のご紹介

兵庫県西宮市には、地域包括ケアシステムを支えるツールのひとつとして『みやっこケアノート』があります。西宮市民の皆さんが、「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられる」よう、ご本人・ご家族、医療・介護・福祉の専門職が情報を共有するためのノートとして誕生しました。詳しくは「みやっこケアノートをご存知ですか?」をご覧ください。

 

 

 

 

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