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入浴介助とは〜訪問看護の現場から〜

西宮協立訪問看護センター、所長の稲葉典子です。今回のコラムでは訪問看護師による入浴介助について考えてみましょう。在宅療養をされている方にとって「自分で、家族の介助で、または介護サービスを使って入浴すること」は、生活リズムを整えるうえで大切な日常生活の一部です。

 

入浴を支援する介護サービスには以下のようなものがあります。

 

  • 訪問看護や訪問介護サービスによる自宅浴室での入浴介助
  • 訪問入浴サービスに来てもらう自宅内での入浴介助
  • ショートステイやデイサービスによる施設での入浴介助
  • デイケアや訪問リハビリによるリハビリテーションを兼ねた入浴介助

 

在宅療養中の方によって千差万別の状況があります。サービス提供者は、心身状態・環境・支援してほしいこと・ご自身でできる範囲など、個々にとってどのサービスを活用するのが適当か選定していくこととなります。以下5つの項目をもとに、訪問看護で支援する入浴介助について、ほんの一部ですが、ご紹介します。

 

 

 

1.心臓や呼吸に関する病気の方の入浴介助

入浴やシャワー浴をすると、爽快感が得られるとともに、疲労を感じる方も多いと思います。浴槽から上がる際、フラッとするようなご経験はありませんか? それだけ、入浴することは、身体の血液循環に影響がある、ということになります。

 

通常、お湯が身体にかかったり、お湯に浸かったりすることで、身体に「静水圧(せいすいあつ)」が働きます。静水圧とは、身体の内部にまで圧力がかかる作用で、心臓や肺に持病がある方は、この圧力によって心臓や肺の働きを加速させなければなりません。これは心臓や肺にとっては、負担となります。たとえば、心臓の病気の方が「半身浴で3分以内の入浴」と主治医から指示されている場合、この指示は静水圧による心臓への負担を最小限に留めるためでもあるのです。

 

心臓や呼吸器疾患の方に訪問看護師が入浴介助する際は、

 

  • 血圧や体温
  • 酸素飽和度
  • 脈拍数の確認
  • 息づかいや身体の熱感
  • 皮膚色

 

などを観察し、変化を察知しながら入浴介助しています。ご自身で身体を洗われる方でも、その動作が心臓や肺に負担がかかっている、と看護師が判断した場合は手伝うこともあります。

 

心臓や呼吸の病気でなくても、在宅療養により活動の機会がないため身体が動かしづらい方、麻痺があり浴室内での移動や浴槽の出入りに介助が必要な方、身体のバランスに問題があり浴室内での転倒が心配な方なども、看護師の観察や介助のもとで入浴することがあります。酸素チューブが入っておられる方であっても、酸素をしながらの入浴を介助いたします。

 

 

 

2.入浴がおっくうになっている方の認知機能に働きかけ、入浴を促す

認知機能の低下は「活発さや前向きさ、興味を持つことそのもの」を減退させることがあり、入浴に関しても認知機能の低下が影響する場合があります。たとえば、記憶力の低下によって「いつ入浴したか」という記憶があいまいになるケース。実際は1週間入浴していないのに「お風呂にはさっき入った」と入浴を拒否されることもあります。

 

看護師はそのような方々との信頼関係を大切にしながら、「お風呂に入りましょう」「いやだ」という押し問答ではなく、「さっぱりしに行きましょう」など、その方の感情が心地よいものとなるよう働きかけていきます。

 

それでも入浴を拒否される場合もあります。そんな時は足浴などの部分浴から始める、といった清潔への働きかけを行っていきます。「入浴した」という事実は忘れても、「心地よかった」という感情が少しでも残るような関わり方を実践していきます。

 

 

 

3.入浴動作の自立、介助量の軽減に向けたリハビリテーション

浴槽の出入り、身体を洗うこと、タオルで拭くこと、服を脱ぐこと、着ること……入浴に関わる全ての動作はリハビリテーションとなります。そのため、看護師が介助しながら、なるべくご自身でできることはしていただけるよう働きかけることもあります。看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士が入浴場面を想定してリハビリを実施し、入浴動作の自立や、「こうしたら介助が楽になる」というアドバイスをすることもあります。同時に、浴室内の手すり設置やシャワーチェアなどの用具導入についても検討していきます。

 

日常生活のなかでも特に入浴は、他人が介入することによって羞恥心が生じます。そのため、可能な限り入浴の自立に向けて模索することが望ましいと考えています。もちろん、どのような状況でも、私たち訪問看護師は羞恥心を少しでも減らしていただけるよう細心の注意を払って支援していきます。

 

 

 

4.入浴介助を通して今の想いを聴く

浴槽に浸かり、温熱作用で気持ちよくなると、ほっとするような気分の中でいろいろなお話を伺うことがあります。浴室以外での訪問看護の場面ではなかなかうかがえない、病気のつらさや苦しさ、病気だけではなくその方の歩まれた人生の回顧など、気持ちがほぐれるからこそ伺うことができるお話もあります。

 

病名が同じであっても、心まで同じ方はひとりもいません。なかには「病気があっても人生の最期まで自宅でお風呂に入りたい」という想いを持っておられる方がいらっしゃいます。そうした場合、看護師はご本人の病状から起きうるリスクを考慮しつつ、希望を叶えることができるよう最善の方法を一緒に考えます。

 

「お風呂に入ることで、より疲れてしまうかもしれませんが、疲れ過ぎないようお声掛けさせていただきますね」

 

たとえばこんな言葉を掛けつつ、人生の最終段階の入浴場面をご一緒することもあります。それは介助をする人だからこそ立ち会うことのできる時間です。ふだんなかなか言えないご家族への感謝を浴槽のなかでお話される方もおられ、そうしたお話をお聴きするたび、入浴は身体面だけでなく心理的な効果も大きい感じます。そして何より、真摯なお気持ちを聴かせていただくことは、「何を大事にされているか」「どう生活したいか」「どう生きてゆきたいか」を汲み取ることにつながるのです。

 

 

 

5.職域を越えた連携の大切さ

ここまでお読みいただいたお話は、訪問看護師による入浴介助のほんの一例です。なかには訪問看護師ひとりの取り組みではうまくゆかず、馴染みのヘルパーさんが働きかける方がスムーズな場合もあります。

 

また、訪問看護の仕事には本格的な浴室の清掃を加えることはできません。そんな時は、冒頭で述べました各種介護サービスを組み合わせるなど、工夫が求められます。医療・介護に関わるさまざまな職種が連携してゆくことが大切です。

 

これからも私たち訪問看護師は、可能な限り在宅療養者の皆さんの自立を促しながら、入浴によるメリットを最大限に活かせるよう取り組んでゆきます。私自身も日々研鑽してまいります。

 

 

 

 

[シリーズ]訪問看護の現場から

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