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“神の手”福島孝徳先生のもとで脳腫瘍、三叉神経痛、顔面けいれんの手術を学んできました[その1]

こんにちは。西宮協立脳神経外科病院、脳神経外科部長の英賢一郎です。英は「はなぶさ」と読みます。今回は「神の手を持つ男」とも呼ばれる脳外科医、福島孝徳先生の下で学ぶべくアメリカ留学をした経験について、2回に渡りご紹介します。

 

 

 

はじめに〜脳神経外科医・英のアメリカ留学記〜

Duke大学病院/[左]英、[右]福島孝徳教授

 

2018年8月から1年間、西宮協立脳神経外科病院を休職し、アメリカはノースカロライナ州(NC)にあるデューク(Duke)大学病院脳神経外科の日本人脳外科医、福島孝徳教授のもとで手術の勉強をさせていただくため、留学して参りました。福島先生の技術と手術の経験数は世界のトップレベルであり、我々脳外科医で彼の名前を知らない人はいないぐらいです。そのパワフルな活躍ぶりとフランクな人柄でメディアからの取材も多く、「神の手を持つ脳外科医」などと称されている先生です。

 

 

 

留学の目的

私はすでに西宮協立脳神経外科病院の部長という立場で、動脈瘤クリッピング術、脳腫瘍摘出術、顔面けいれんや三叉神経痛に対する手術、脊椎手術なども行ってきました。しかし頭蓋底領域、脳幹、脳深部などといった脳の中心や底にあたる病変では、その場所に安全に到達するのが非常に難しく、知識と技術、そして何より経験が必要です。自分だけの経験数では限界があります。

 

日本は人口あたりの脳外科医の数は多い方ですが、日本の脳外科医は手術以外の患者さんも多く診る必要があり、「脳外科医一人あたりで経験できる手術数は、海外に比べて少ない」という現実があります。1年間の留学を通してこれまでの手術解剖の知識をブラッシュアップすること、福島先生のアメリカでの手術を集中的に見学することで自らのスキルを上げること、それが今回のアメリカ行きの目的でした。

 

 

 

一日のスケジュール

平日はほぼ毎日、朝7時半から手術予定が組まれています。アメリカの医師免許はありませんので、手術室に入って見学するまでの資格です。大体1日あたり1例から2例であり、多い時で3例ありました。最も難しい手術の1つである錐体斜台部髄膜腫(脳の底にできる良性腫瘍。良性だが大きくなると脳幹を圧迫し正常な神経を巻き込み、治療困難になる)の手術、大きな聴神経腫瘍で耳の構造の隙間を削っていく手術、大後頭孔(頭蓋骨の一番底で頚椎につながるところ)から脳幹前面に広がる大後頭孔髄膜腫に対する手術などです。

 

三叉神経痛、顔面けいれんに対する脳神経血管減圧術(MVD)はたくさん見学できた手術でした。私もすでに数十例経験がありますが、開頭からアプローチの仕方、鍵穴手術の術野の作り方、手術書にはない福島先生の口から語られるtips(コツ)など一つひとつが勉強になりました。

 

福島先生は1ヶ月ごとに日本とアメリカを行き来されます。日本や海外に行って不在にされている時は、Duke大学の研究室(ラボ)にて手術解剖実習トレーニングであるCadaver Dissection(顕微鏡下で頭部献体を実際の手術アプローチに従って手順を進めながら解剖を確認する勉強)に取り組める時間でした。

 

 

 

名門デューク(Duke)大学とラボでの手術解剖(Cadaver Dissection)

研究室内実習用のマイクロスコープ

 

Duke大学は全米屈指の難関私立大学で、世界レベルで常にトップ10に入る名門です。卒業生には多くのノーベル賞受賞者がいます。また、文武両道としても有名です。大学バスケットボールリーグのDuke Blue Devilsは全米一になるほど有名で、ここから多数のNBA選手を輩出しています。

 

キャンパスは石造りの美しい伝統的な建物で、大学内のシンボル的建造物であるデュークチャペル(教会)は荘重な雰囲気です。この大学医学部内に福島孝徳先生の頭蓋底解剖研究室(ラボ)があります。自分専用に実習用の手術顕微鏡を確保させていただき、1日行くと5〜8時間程度かけて解剖します。1年で延べ60回以上解剖実習することができました。私は日本脊髄外科学会認定医で脊椎手術の経験も多かったため、関連する頭蓋頚椎移行部(頭部と首の境目)や後頭蓋窩(脳の後ろで小脳のある空間)について重点的に勉強しました。

 

 

 

...[その2]へつづく

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